東京地方裁判所 昭和44年(ワ)3332号 判決
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〔判決理由〕(二) <証拠>を総合すると、少なくとも次の事実が認められる。
被告は時速約五〇キロメートルで、通称甲州街道を西から東に向けて走行中、事故現場付近対向二車線の区分線上付近を南から北に向けて横断歩行中の原告他一名の人影を認めたが同人らが中心線付近で被告車の通過を待つてくれるものと軽信し、そのまま進行を継続したところ、予期に反して原告が中心線で待つてくれずそのまま歩行を継続したため、急拠ブレーキを踏んだが及ばず、中心線より約2.4メートル北側に寄つた地点で被告車右前部フエンダー付近を凹損が出来る程原告に激突させ、転倒せしめた。右事実によると被告は原告の横断歩行を認めながら、原告が被告車を待つてくれるものと軽信した点に過失があるとともに、前記のとおり避譲、転把、警音器吹鳴の余地がありながら、原告の安全を確保せず、至近距離に至り、はじめて危険を感じて急制動の措置を採つたものであるから、被告の無過失の主張は理由がない。
(三) しかしながら、他方、<証拠>から、本件事故は、歩車道の区別ある時速五〇キロメートル制限の四車線車道上の別紙図面の地点で起つておることも明らかであつて、原告の北側歩道に今一歩という地点である旨の主張もまた認めがたく、原告にも、高速車の多い巾員14.4メートルの車道を、付近に横断歩道があるにもかかわらず敢えてバス停留所に行くためにこれを無視して横断し、かつ中心線で西方からの車両に注視しないで漫然と歩行を継続した過失があり、原告のこの過失も本件事故の一因をなしていると認められる。
(四) 原告の如き高齢(編注―八〇歳)で必ずしも高速度交通機関に順応しえない者も歩行者にいることは稀有なことではなく、同機関を利用する者は、これらの者を保護すべき立場にあることも論を俟たないが、これを考慮してもなお原告の過失はほぼ四、被告の過失はほぼ六という割合になると見るべきもので、これを賠償額の算定にあたり斟酌せざるを得ない。(倉田卓次 小長光馨一 佐々木一彦)